記事の企画はどう立てるべき?ライターの教える「採用される企画」を出す方法

ライターが書く記事ネタを決める方法は、大きく分けて2つあります。1つは、編集者やメディア、インタビュアーから「これをネタに記事を書いてくれませんか?」という提案を受ける「依頼受諾型」。もう1つは「これをネタに記事を書きたいんです!」とライター自らが提案し、受諾されれば話が進む「企画立案型」です。

どちらの記事も手掛ける現役ライターからすると、楽なのは前者です。自分で企画を考える手間なく記事制作に入れますし、ブラックな話をすると、記事がヒットしなくても「自分で考えた企画じゃないからな……」という言い訳の余地があるから。

一方、書いていて楽しいのは後者です。自分で企画を立案すれば、文字通り書きたい記事を書くことができます。わたしも、過去にはファンだったサッカー選手を取材したり行ってみたかった観光スポットを訪問する記事を書いたりしています。

しかし、問題は「そもそも採用される企画をどう作るか」。わたしも、最初の頃はトンチンカンな企画を連発し、書きたい記事を全く書けていませんでした。周りを見ていても企画に苦しむライターは多いので、同じ悩みを抱える方も多いはず。

そこで、この記事では現役ライターが「企画を思いつくために意識すべきこと」「編集者への企画の出し方」を大公開します!

1.採用される企画を思いつくために意識すべきこと3選

企画出しの難しさは、企画につながる面白いネタを仕入れること。そこさえクリアできればあとは簡単なので、まずは企画を思いつくまでに意識すべきことをまとめてみました

1.「日常すべてがネタの源泉」と考え、多くの経験を積む

企画というのは、案外「よっしゃ、企画立てるぞ~」と考えるより、日常の何気ない瞬間に思いつくものです。何かのイベントに参加した際、何かの商品を買った際、いいことがあった際、悪いことがあった際……。

そのため、「日常のすべてがネタの源泉」と認識し、いいことでも悪いことでもいろいろなことを経験するようにしましょう。普段やらないことをする、普段会わない人と会うといった瞬間こそ、新たな気づきが生まれやすいからです。

一方、日常の中で思いついたネタは、時間が経つと案外忘れてしまうもの。それを防ぐために、ぜひ思いついたネタは適宜メモするようにしてください。「○○について」「▲▲ネタ」というように簡単な短文で構いません。

2.読者のニーズを考慮しつつ、自分の思いも込める

採用される企画の立て方は、基本的に「読者が気になるネタ」をつかめるかどうかに尽きます。たとえば、「安倍前総理の語る、戦後最長内閣の実態」というネタを出したとすれば、読者の興味は引けそうですよね。政治に興味のある人はもちろん、「安倍晋三」のネームバリューは一般人にも十分通用しそうです(おそらく取材を受けてはくれないでしょうが……)。

一方、「23歳会社員の語る、作業効率化のためのアプリ5選」という企画があったとして、この企画は面白そうでしょうか? 「23歳会社員」という時点で社会経験はあまりなさそうですし、作業効率化アプリの解説をするには引きが足りないとわたしは感じます。

ただし、単に「読者のニーズ」だけを考えればいいというものでもありません。読者ウケのいい企画は採用されやすいですが、それだけだと書きたい記事が全く書けなくなりかねませんし、書き手の情熱がこもらない安っぽい記事を生み出すことにもつながります。

そのため、企画にはぜひ「自分の思い」も込めてみてください。ベストなのは、「これを知りたい、書きたい!」という気持ちから出発し、思いついたネタの中から読者ウケもよさそうなものを選んでみるといいでしょう。自分の知りたいことは読者も知りたいことである場合が多いですし、その逆も然り。

とにかく大切なのは「読者ウケ」と「自分の思い」の両立です。

3.世の中に出回っている記事をよく分析してみる

文字通りゼロから企画を立てるのは、わたしでも難しいです。しかし、世の中にはすでに数多くの「完成した記事」が出回っていることに着目してみましょう。こうした記事は、プロの編集者やライターが頭を悩ませつつ「これが読者にウケるだろう」「こんなネタを書いてみたい」と考案したもの。企画を立てるうえで大いに参考になります。

最初のうちは、ぜひ世の中の記事をよく分析してみましょう。とくに、多くの読者に読まれている記事、SNSでバズっている記事などは注視すべきです。

もちろん、丸パクリはいけません。しかし、既存の企画を少し違う角度から見直すだけで、企画として成立することもあります。

具体例を挙げましょう。わたしは、過去に「コロナ禍の箱根」についての記事を書いたことがあります。企画を立てた当初は、「コロナ禍で箱根の観光地が苦しんでいるよ」という実態を発信することが趣旨でした。この「コロナ禍で苦しむ箱根」という情報自体は、感染初期とはいえすでに世の中に出回っていましたし、真新しいものではありませんでした。

しかし、この記事ではわたしが箱根に直接向かい、現地の様子を取材して街の人にインタビューするという点で独自性があり、企画として採用に。このように少し角度を変えたり、事態を深堀りするだけでも企画は成立するのです。

2.思いついた企画を編集者に送る際の4ステップ

上記の点を踏まえ、「これを企画として提出してみよう!」というネタは思いついたでしょうか? 思いつかない場合は日常の中から再度ネタを探してもらうとして、ここでは思いついたネタを実際に編集者に送る上で意識すべきことを4ステップにまとめてみました。

ステップ1.企画と既存記事の相性を確認する

週刊誌系や旅行系、グルメ系、IT系……など、メディアはそれぞれに固有のカラーがあります。そのため、どんなに面白い記事ネタでも、そのメディアに合ったものでないと採用される確率は低くなってしまいます。企画を送る前に、既存記事やメディアのカラーはよく確認しましょう。

ちなみに、ここで思いついた「面白いネタ」を、できるだけ記事化するための近道は「多くのメディア、編集者とつながりを持っておくこと」に尽きます。そうすれば、思いついた企画を無駄なく最適な媒体に提案できるので、企画の採用率が高まり、記事が読まれやすくなるでしょう。

ステップ2.どんな手法で記事にしていくかを考える

ネタが決まったのちは、それを実際にどんな手法で記事にするかを考えていきましょう。例えば、先ほどと同じく「仕事効率化アプリ」をテーマに記事を書くとして、具体的には以下のような手法が考えられます。

  • 有能ビジネスマンにおすすめの仕事効率化アプリを教えてもらう「インタビュー」
  • 街ゆく人に使っている仕事効率化アプリを聞く「アンケート」
  • ウワサの仕事効率化アプリを使ってみる「レビュー」
  • 「おすすめの仕事効率化アプリ〇選」のような「まとめ」

どれも工夫次第で記事になりそうですが、個人的には「売れっ子有名起業家10人に聞く、おすすめの仕事効率化アプリ」みたいな記事を書いてみたい感じがします。優秀な起業家が愛用する仕事効率化アプリって、たぶんいいアプリじゃないですか。あと、人によってどれくらいの違いが出るのか、はたまたみんな同じ感じのアプリを使うのか、気になるので。

ステップ3.簡潔かつ要点をまとめた企画をつくる

それでは、いよいよ自分の思いをこめた企画を文章にしてみましょう。

企画書というと、「株式会社○○ ▲▲様」と宛先を記し、「拝啓 時下ますますご清栄の~」と仰々しい挨拶から入り、長文で企画について延々と説明するようなものが思い浮かぶかもしれません。

しかし、結論から言えば、初めての連絡でもここまで丁寧な企画書を書く必要はほぼありません(昭和カルチャーが生き残っているメディアだと、ごくまれにあり得ます)。

むしろ、編集者の立場としては「長々した挨拶は要らないから、この企画の要点を端的に説明してくれ」と思うので、決められたフォーマットがなければ企画の説明は長くても5行程度でまとめてみることをおすすめします。

企画書に盛り込むべきポイントは以下の通り。

  • 仮タイトル
  • 記事を書く手法や対象
  • その企画を記事にすべきだと思う理由
  • 読者に伝えたいこと

では、具体例として「売れっ子有名起業家10人に聞く、おすすめの仕事効率化アプリ」の企画書をつくってみます。

仮タイトル:売れっ子有名起業家10人に聞く、おすすめの仕事効率化アプリ

業務効率を上げる仕事効率化アプリは人気ですが、数が膨大なため「どのアプリを使うべきか」を悩む人は多いと思います。そこで、今をときめく〇〇さんや▲▲さんのような有名起業家10人にアンケートをとり、おすすめの仕事効率化アプリを回答してもらいます。それをまとめ、本当に優秀な人が使う仕事効率化アプリを読者に伝え、アプリ選びの悩みの解決を目指します。

やっつけですが、だいたいこんな感じです。

ステップ4.躊躇せずにダメもとで積極的に送る

ネタを出すメディアが決まり、制作手法も決まり、企画書もできた。あとは送るだけ……なのですが、ここで躊躇してしまう人もいるでしょう。「断られたらどうしよう」「企画を送り付けるのは迷惑じゃないかな」と。

しかし、ここは躊躇わず思い切って企画を送りましょう! 編集者も、あまりに雑な企画を大量に送られるのでもなければ、それほど嫌な顔はしませんから。

なぜなら、編集者はいつも記事ネタを探しており、企画の持ち込みを歓迎する人がほとんどだからです。また、企画が通らないのは執筆歴の長いライターでも起こりうることなので、それほど気にする必要はありません。

ちなみに、「企画書」というとWordで作成したファイルをPDFで送るようなイメージをしがちですが、メールをするのと同じように本文に書く形で送って大丈夫です。普段はメールすらせずにチャットワークやSlack、LINEなんかで企画を送ることも多いので、送り方にこだわる必要はありません。

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ABOUT US
齊藤 颯人
『Red Pencil』編集長、FP事務所『トージンFP事務所』代表。1997年東京生まれ。上智大学文学部史学科卒業。大学在学中より学生ライターとして活動し、卒業後はそのまま新卒でフリーライターに。歴史やフリーランス、旅行記事などを中心に執筆し、フリーランスメディアで編集者としても活動している。