取材申請書はどう書くべき?すぐに使える取材申請方法を解説!【はじめての取材:Vol.3】

ライターやジャーナリストのほとんどが経験する「取材」。しかし、学校で取材の方法について勉強する時間はなく、いざ取材やインタビューをするとなったとき、どのように進めていいのか分からない方も多いのではないでしょうか? わたしは出版社や新聞社を経ずに独学でフリーライターになったので、取材に慣れるまでとにかく苦労しました。

取材に正解はありません。それでも、ほかのライターが実際に取材をどのように申し込み、どのように進めているかが分かれば、はじめての取材が少しは楽になるハズ。

シリーズ連載「はじめての取材」第三回では、取材対象者に取材を申し込む際の方法・心構えについて解説していきます。

1.取材申請は断られることも多い

まず、大前提として「取材申請は断られることも多い」ということを覚えておきましょう。取材を断られる理由には、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 忙しい
  • 恥ずかしい
  • 答えられるネタがない
  • 取材は受け付けていない

前回の記事で、「取材先の選び方」については解説しましたが、最適(と思われる)取材先を見つけても、これだけ多くの理由で断られてしまうのです。

また、取材については、対象者にどれだけ「取材されるメリット」を感じてもらえるかが重要です。これは、誰もが憧れるメディアからの取材申し込みなのか、取材を受ける機会が多いのか少ないのか、話したい内容と取材の概要が一致しているかなど、メディアや対象者の都合にも左右されますが、できる範囲で「取材を受けるメリット」を示せるような取材申請書をつくりたいところです。

2.取材申請書の書き方

取材申請書の書き方はライターやメディアによってさまざまですが、盛り込むべきポイントは、おおよそ以下の3つになっています。

  • 取材者や掲載媒体の素性を明かす
  • 取材の概要を説明する
  • 取材を受けるメリットを示す

以下では、どんな取材申請書にも共通して入れるべき上記のポイントを、さらに具体的に見ていきます。

1.取材者の素性を明かす

まず、「そもそも自分がどんな存在なのか」を取材対象者に伝え、相手の不安を解いていきましょう。対象者からすれば「いきなり知らない相手から取材申し込みがくる」というケースが大半なわけで、“正体不明感”をなくしていくのはマストです。

具体的には、申請書の冒頭で「フリーライターの○○です」のように、申請者の正体を明示しましょう。また、もし仮に「対象者に伝えるべき自分の情報」があれば、それを追記するのも有効です(例:フリーライターに質問する際に「フリーライターのためのメディアを運営している」という一言を添えれば、信頼性が向上する)。

2.掲載媒体の素性を明かす

つづいて、掲載される媒体の情報も明かしましょう。これも相手の不安を解くことにつながるだけでなく、「取材を受けるメリット」を感じてもらうための材料になります。

また、業界では多少の知名度があっても、一般に知られていないメディアはたくさんあります。そのため、単にメディア名を明かすだけでなく、

  • メディアの概要やビジョン
  • PVや拡散力などの数字
  • 媒体資料

などを相手にも見せ「このメディアに取材してもらえるのは嬉しい」と思ってもらえる工夫をしてみましょう。

3.取材の動機や目的を説明する

取材をする以上、対象者と「取材の動機や目的」を共有する必要があります。これを伝える際に必要になる情報はおおよそ以下の通り。

  • なぜ取材するのか
  • どうしてあなたを選んだのか
  • 取材を通じて何を知りたいのか
  • 読者に何を伝えたいのか
  • 仮の記事タイトル

とくに、人気の企業やインフルエンサーには取材申し込みが殺到している可能性が高く「取材しなければならない理由」をしっかりと説明し、適当に取材先を決めているわけではないと伝えたいところ。余力があれば「取材を受けるとどんないいことがあるか」も伝えたいですね。

そして、これを相手に届くよう説明するには「取材先選び」の段階で自分の中で整理しておく必要があります。

4.取材の細かい流れを提案する

ここまでで取材の大枠は説明できていますが、いざ取材をするには具体的な段取りを決めなくてはなりません。取材を進める上で詰めるべき点は以下の通り。

  • 取材方法(オンラインor対面)
  • 取材日時
  • 記事作成スケジュール
  • 質問事項
  • 写真撮影の有無
  • 謝礼の有無(支払えない場合も多いですが、メディアがOKを出したら「謝礼払えます」とアピールしてみましょう)
  • 記事で身元を明かすか否か

これらは取材を申し込み、OKが出てから調整することもできますが、取材の目的によっては事前に提案しておくほうが親切です(例:「速報性」が大切なニュース記事の場合は、取材日時や記事作成スケジュールをはっきりさせ、「急ぎ案件です」と伝える)。

5.文書として体裁を整える

取材申請書を文書として送る場合、ビジネス文書として成立するように決まった項目を盛り込む必要があります。

必要になるのは、おおむね以下の文言です。

  • (文書右上に)日付
  • (文書左上に)○○様or○○御中
  • 「取材申請書」のタイトル
  • 自身の名前、肩書
  • (明かせる場合は)所属する団体名、住所
  • あいさつ文(例:時下ますますご清栄のことと~)

3.対象者別、取材申請書の送り方

取材申請書に盛り込むべきことが整理できたところで、いよいよ取材申請書の送り方を解説します。

取材申請書の送り方は先方都合によって大きく変わりますが、対象者ごとにおおよその傾向は存在するので、それを見ていきましょう。

前提:文書として送るか、書面で送るか

ここまで「取材申請書」と書いてきましたが、じつは「取材申請書」という形式ばった文書を送る機会はそう多くありません。

取材申請の送り方は「取材申請書という文書で送る(Wordファイルor郵送)」場合と、「取材申請書に書くべき内容を書面(メールやチャット)で送る」場合があり、後者のほうが一般的です。

そのため、基本的には後者で送るつもりをしておき、前者を求められた場合は取材申請書の形で送るようにするといいでしょう。メールやチャットの場合は「ビジネス文書に盛り込む体裁」はあまり意識しなくても大丈夫です。

なお、どの手法にも共通することですが、人間なので「見落とし」が想定されます。すぐに確認してほしい場合、連絡が届いているか不安な場合は、一度電話して取材を申し込むと手っ取り早いです。

1.一般企業

一般的な企業に取材申請をする場合、その企業のHPにある、「お問い合わせ」欄か、「お問い合わせ用メールアドレス」から取材を申し込むことが多いです。取材に慣れている企業だと、「取材希望の方はこちら」といった専用のフォームが用意されていることもあります。

取材申請書を求められるパターンは少ないですが、堅めの企業だと必要になる場合もしばしば。取材の窓口は広報になるケースが一般的なものの、事実確認をするために社内の担当部署と連携をとってもらえる場合が多く、取材の許可や原稿確認の戻しに時間がかかることもあります。

2.一般人や小規模企業

一般人や小規模企業に取材申請をする場合、「相手がどれだけネット上に露出しているか」によって対応が大きく変わります。HPを持っていたり、ブログを持っていたりする場合はそこから申し込むのが一般的ですが、SNSしか開設していないという場合も。

そうなるとSNSから申し込むしかないのですが、たとえばTwitterのDMで申し込むと意図せず見落とされてしまう場合が多いため、リプライや別の手段で相手に伝える工夫も必要になってきます。

3.著名人、有名人

著名人や有名人の場合、取材対応は芸能事務所が管理している場合も多いです。そのため、どこかの事務所に所属している場合は事務所にアポをとるようにしましょう。ただし、多忙な人も多いため、アポをとるのはひと苦労。謝礼が必要になるケースも多いため、メディア側ともよく打ち合わせをするべきです。

ただし、彼らは非常に取材慣れしているので、取材そのものは一般人よりも格段に進めやすいです。怖気づく気持ちもよく分かりますが、機会があればぜひチャレンジしてみましょう。

4.官公庁や地方自治体

官公庁や地方自治体の場合、取材申請書は必須といえます。取材そのものも非常に堅く進行していくため、オンライン取材がNGだったり、専用のオンライン会議ツールを使っている場合もしばしば。

最初はお問い合わせから入っていくこと自体は同じなのですが、レスポンスは遅めになることも意識しておきましょう。

4.実際の取材申請書例

ここまで、取材申請書の書き方や送り方を見てきました。ただ、言葉で言われてもよくわからない方もいると思うので、最後に現役ライターの私が取材申請書のサンプルを書いてみます。

今回は、私がこのサイトのライターだと仮定し、架空のライター・Aさんに取材申請してみるつもりで文面を作成してみます。ぜひ、参考にしてみてください。

A様

突然のご連絡失礼いたします。私、ライター・編集者向けメディア「Red Pencil」のライター、齊藤颯人と申します。このたび、ライターとしてご活躍中のA様に取材のお申し込みをしたく、ご連絡を差し上げました。

現在、当サイトでは同業者やライターを目指す人に役立つ情報を発信するため、現役で活躍するライターの皆さんにお話を聞き、それをまとめた「ライター図鑑」という連載企画を立てています。その連載の中で、学生時代からライターとしてご活躍され、未経験からフリーライターになったA様に、ライターノウハウやご自身の生き方について語っていただければと思っております。

当メディアはライターや編集者が読者の大半を占めており、A様のライター処世術は多くの方に役立つ情報になると思います。A様のキャリアを整理するいい機会にもなるかと存じますので、取材をお受けいただけると有難いです。

以下、取材の概要です。

【仮タイトル】
学生ライターから新卒ライターへ。業界未経験の若手ライターが語る、ライター処世術

【取材概要】
業界未経験で独立し、若くからライターとしてご活躍されてきたA様。そのキャリアや生き方、ライティングノウハウなどを伺い、未経験の若手がどのように業界を生き抜いてきたのかをライター初心者、未経験者に役立つ形で発信する。

【ご質問案】
・ライターになった動機
・どのように仕事を獲得していったか
・どのようにスキルを伸ばしたか
・若いうちから活動してよかったこと、苦労したこと
・初心者ライターへのアドバイス
など

【取材日時、場所】
取材日時はいつでも可。場所は対面希望(写真撮影の都合)

以上になります。取材のほうご検討いただければ幸いです。

【Red Pencilについて】
学生時代から活動してきた新卒フリーライターの私が立ちあげた、ライター・編集者向けのWebメディアです。普通のWebメディアやニュースサイトでは注目されない、ライター・編集者の狭く深い需要に応えたニッチな記事を中心に配信しています。読者には業界人が多く、SNSでも一定の支持を集めています。

【連載:はじめての取材】

取材の様子

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
齊藤 颯人
『Red Pencil』編集長、FP事務所『トージンFP事務所』代表。1997年東京生まれ。上智大学文学部史学科卒業。大学在学中より学生ライターとして活動し、卒業後はそのまま新卒でフリーライターに。歴史やフリーランス、旅行記事などを中心に執筆し、フリーランスメディアで編集者としても活動している。