「歴史ライター」の仕事について。現役の経験者が語る、業務内容・やりがい・難しさ

こんにちは、歴史ライターの齊藤颯人(@tojin_0115)です。

以前、「歴史好きが歴史を仕事にするにはどうすればいいか」という記事を執筆したところ、それなりに反響がありました。

書き上げてから半年以上が経ったいま、フリーライターの私にとって「歴史」という分野の仕事は欠かせないものになりつつあります。

そこで、この記事では、私がメインに担っている「歴史ライター」という仕事について

  • 業務内容
  • 求人や応募の方法
  • やりがいと難しさ

といった観点から、経験談を踏まえて解説していきます。「歴史を仕事とすることを諦めきれない方」「ライターとして歴史系の記事を書いてみたい方」には、お役に立てるかもしれません。

1.歴史ライターになるまで

今でこそ「歴史ライター」を名乗るほどに歴史系の仕事が多くなっていますが、ライター業を始めたときからこうだったわけではありません。

むしろ、歴史という分野で原稿を書いてお金をもらうとは思っていませんでした。そんな私が、どうして歴史系の仕事を多くこなせるようになったのでしょう?

1.まさか歴史が仕事になるとは思っていなかった

私は2019年の1月からフリーライターとして活動を始めましたが、なにも最初から仕事の中心に「歴史」がいたわけではありません。大学の史学科で学んでおり、個人的にも大好きな分野なのに……です。

こうなった答えはかなり単純で、「歴史の原稿を書かせてくれるような仕事はないと思っていた」から。

世の中に歴史の記事があることは知っていましたが、そういうものはたいてい大学教授や歴史作家が書いていると思っていました。なので、フリーライターの出る幕はないと決めつけてしまったのです。

2.声をかけてくれる人が出てきて、仕事になることを知る

「歴史系の記事を仕事として書く」ということが全く思い浮かばなかった私は、全然関係のないジャンルの仕事ばかり行っていました。

そんな私が「歴史の記事を書いてお金になるらしい」ということを知ったのは、登録していたクラウドソーシング上で「歴史系の仕事をお願いできますか?」とお誘いされてから。

当時の単価としても悪くなかったので執筆をしてみると、書いていて非常に楽しいと気づきました。そりゃそうです。もともと歴史が好きで好きで仕方がなくて史学科に入ったわけですから。

こうして「歴史系の記事」を書く楽しさを知った私は、他の分野が行き詰まってきたこともあり、歴史系の案件を中心に応募するようになりました。

すると、他ジャンルでは相手にもされなかったメディアへの営業がかなり上手くいくようになったのです。

「あ、もしかして『史学科(歴史に詳しいこと)』×『フリーライター』という組み合わせは武器になるのかな?」

そう思いました。

3.単純な歴史記事だけでなく「歴史×ナニカ」の記事も書けるように

歴史ライターとしてそこそこ仕事がもらえるようになると、毎日の原稿執筆が本当に楽しくなってきました。

このまま仕事量も収入も増えていけば、言うことはない……と考えていたのですが、ここで新たな問題が浮上します。

最初に「歴史なんて仕事になるのかな?」と考えていたように、やはり歴史専門のメディアは非常に数が少ないのです。

この頃には日本一の歴史メディア「武将ジャパン」様でも記事を書けるようになっていたのですが、いかんせん絶対数が少ない。

「歴史専門メディアだけで書いていては、これ以上のライターにはなれない」

そう考えた私は、「歴史」の知識を生かしつつ、それを「ナニカ」別のジャンルに落とし込むことを目指しました。やがて、この「ナニカ」と相性がいいのは、「旅行」だと気づきます。

有名な観光地は、そのまま歴史的にも有名な史跡であることが多いです。つまり、私の歴史知識は、旅行系メディアでの「歴史旅記事」という形でアウトプットできるのです。

歴史と親和性の高そうなメディアに「歴史の有識者」として応募したところ、いくつか仕事に結びついてくれました。今では、歴史系の仕事の大半が旅行関係の記事になっています。

2.歴史ライターの業務内容

私がどのように歴史ライターとなったかを整理できたところで、この「歴史ライター」という仕事は、具体的に何をやっているのかという点を解説します。

「歴史に関する記事制作をしている」

ということは分かると思いますが、いったいどのような記事を書いているのでしょうか。具体例付きで見ていきましょう。

1.人物伝や合戦のSEO記事

まず、オーソドックスなのは「人物伝」や「歴史上の出来事に関するまとめ記事」です。具体例を出すと、こんな感じ。要はSEO記事です。

基本的な制作の流れは「本や論文を読んで知識を整理する→記事にする→納品する」という三ステップ。歴史好きなのでもともと知っている部分も多いですが、覚え間違い回避や最新の学説を踏まえたいのでリサーチには力を入れます。

また、上記がすべて戦国の記事であることからも分かるように、「戦国」「幕末」といった人気の時代にまつわる原稿依頼がほとんど。私の専門は歴史学の中でも日本近現代史なので、厳密に言えば外れてはいます。

ただ、日本史であれば中世や近世史も趣味として勉強はしているので、今のところ致命的な知識不足を感じたことはありません。

2.旅記事や博物館などの取材記事

先ほど触れたように、「歴史関係の史跡」や「博物館」などを訪問し、それを記事化する仕事もあります。

過去の執筆記事では、以下のようなものが代表例です。

訪問する=取材というステップを挟むことになるので、仕事がややハードになると同時に報酬も上がることがほとんど。なかなか大変な仕事なので気合を入れなければなりませんが、その分のやりがいもあります。

取材で史跡を訪問すると、取材に関する経費を請求できることが一般的です。

しかし、私の場合は経費が出なくても勝手に一人で日本中の史跡を周っているので、この場合「原稿料と取材費をもらいながら観光する」という素晴らしい仕事に。

流石に単なる観光ほど気軽ではありませんが、普通の観光では見られないものが見れたり、ガイドの方に案内してもらえたりすることもあります。

3.書籍の出版・編集

歴史系の本・書籍の出版や編集に携わることもできます。

多いのは歴史系書籍の中でも「エンタメ系」に分類されるもので、歴史を面白おかしく語るような内容になってきます。実際、私は最近「初心者のための歴史解説本」を一冊ブックライティング中で、これもやりがいがあり、面白い仕事です。

いわゆる「学術出版」になってくるとフリーライターには中々厳しいものもありますが、研究レベルで秀でたものがあれば不可能ではありません。

ニッチでも一定の需要があると判断すれば、Kindleで容易に電子出版することもできますし。

4.歴史イベントやクイズ番組に呼ばれることも……

これは直接ライターの仕事というわけではないのですが、歴史ライターをやっていると「歴史イベントやクイズ番組」に呼ばれる機会がまれにあります。

私の場合、昨年にTBSで放送されたクイズ番組「クイズ!オンリーワン」に、「戦国武将マニア」として呼ばれました。

番組の内容は、職場がまとめてくれています。

こんな風に、不思議なメディア露出があるのも歴史ライターならではなのかもしれません。将来的に、歴史トークショーの「聞き手」くらいができたらいいな、と思っています。(話し手は教授の方にお任せしたい……)

3.歴史ライターの難しさ

ここまでの内容から、私が「歴史ライター」という仕事を楽しくこなしていることがご理解いただけたと思います。

が、「歴史」という特殊なジャンルを取り扱っている以上、他のジャンルにはない「難しさ」も多いのは事実。

以下では、歴史ライターの「難しさ」に触れていきます。

1.小さなミスでも必ず誰かに指摘される

歴史というジャンルは、非常にマニアの多い世界。とくに戦国ファンは絶対数が多いため、マニアの数も激増します。

読者にもマニアは多く「小さなミスや、細かな解釈の間違い」があった場合、絶対に突っ込まれてしまうのです。そのため、歴史系の記事を書くことにはリスクが付きまとい、知識の乏しいライターの記事が炎上している現場は何度も見てきました。

幸い、私は大学でしっかり歴史を勉強してきたためか、大きな炎上を経験したことはありません。今後もこの調子で良質な歴史記事を書いていきたいです。

2.「エンタメ」と「学術」の両立が難しい

Web上で執筆される歴史系の記事は、当然ながら「多くの人に読んでもらい、収益につなげる」という狙いがあります。これWebメディアの大前提であり、歴史ジャンルだけにあてはまるものではありません。

ところが、私が今まで大学で学んできた歴史学は「史料を入念に調査し、歴史の実像を解き明かす」という学問。両者は対立してしまうことも珍しくなく、「エンタメ」と「学術」の両立は非常に難しいです。

オリエンタルラジオ・中田敦彦が公開した「YouTube大学」の炎上問題も、まさにこの点で議論を呼びました。

では、どうしてこの点で炎上してしまうのか。極端に言えば、メディア側は「収益が上がれば、歴史の実像はどうでもいい」と考えがちですし、一方の歴史学側も「歴史の実像が解き明かされていけば、収益はどうでもいい」と思っていることが多いため、両者はどうしても相いれない関係になってしまうのです。

なので、私の場合「内容は学術的になるように、文体や解説はエンタメを意識する」という方法を採用して、対立しがちな二つの軸をなるべく近づけようと努めています。

この点を最大限頑張って工夫したのが、和樂webで執筆した「『ワシがう〇こを漏らしただと!?』徳川家康にインタビューしたら、脱糞説に激怒された」という記事。一見、「徳川家康へのインタビュー」というメチャクチャな記事ですが、実は中身に最新の学説を反映し、楽しみながら読者に歴史を学んでもらえるよう工夫しています。

3.人気ジャンル以外を書く機会が少なくなってしまう

先ほどもチラッと触れましたが、歴史の記事はどうしても「戦国」や「幕末」といった人気ジャンルに寄りがち。なので、知名度が低めの時代・ジャンルはほとんど依頼がありません。

一例を挙げると、私の本当の専門は「日本近現代スポーツ史」なのですが、このジャンルでの依頼は入りませんでした。

もともと歴史学の中でもかなりマイナーで、ほとんど研究する人もいない領域。ましてやメディアでのライティングとあれば、担当できないのも仕方ないことでしょう。

ただし、この点に関してはメディアでのライティングではなく

  • 自分のブログ
  • 電子出版

などを駆使すれば、ニッチな層に売り込むことはできます。

4.歴史ライターの求人はほぼないので、知識をつけて自ら売り込むべき

ここまで「歴史ライター」という仕事の中身について解説してきました。歴史が好きな方なら「歴史ライターになってみたい!」と興味を持ってくださっているかもしれません。

しかし、残念ながら歴史ライターになるには、「それなりの専門性と、積極的な営業」が求められるのは事実です。

まず、専門性という点で言えば、一般的な歴史の知識を有するうえで

  • 研究書慣れ
  • 史料解釈
  • 歴史学用語の理解

が、史学科の一般的な学部生程度にはできたほうがいいと思います。しかし、以上の知識をつけて、Webライティングのイロハを学んだだけで終わりではありません。

歴史に関するライティングの仕事は多くないので、自分から「歴史の記事を書きたい」とメディア側に売り込んでいく必要があります。

そこで力を証明するために

  • ブログで歴史記事を積み重ねる
  • 他の人にはできない分野に強みを見つける
  • 「歴史×ナニカ」を考える

という工夫ができてくると、仕事にありつけるかもしれません。

最後に、もしここまでの記事を読んで「ぜひ歴史系の記事を書いてほしい!」と思ってくださったメディアの方がいらっしゃいましたら、こちらのお問い合わせフォームよりご一報ください。泣いて喜びます。