WebライターがSNSで「月○○万達成」と”高収入“アピールをするべきではない4つの理由

ライターが高収入アピールをするべきでない4つの理由

「月○○万達成!」
「最高月収○○万」

……のように「高収入」をアピールしているライターを、SNSなどで見かけたことはありませんか?

収入を明かすことに対しては、「人前でお金の話をオープンにするのは下品」といった批判の声が多い印象がありますが、私はその角度から収入アピールを否定する気はありません。実際、ほかのライターが月にどれくらい稼いでいるかを知りたいという声は多く、一定の価値がある情報だと思うからです。

しかし、SNSやブログで「月○○万達成!」などと収入アピールをするのは、現役の編集者としておすすめできません。

今回の記事では、個人的にWebライターがSNSで収入をアピールするべきではないと思う4つの理由を解説していきます。

1. 「うさんくささ」が出てしまう

正直、これが最大の理由です。SNSで収入アピールをしていると、どうしても「うさんくささ」が出てしまうように感じます。実際、私が所属している編集部のメンバーからも、「SNSで収入アピールしている人には記事を頼みづらい」という声を聞きます。

背景には、SNSで収入アピールをするライターのなかには、ライターとしての大きな実績がないにもかかわらず、いわゆる「情報商材」「ネットワークビジネス」などに手を出している人が目につきやすいという事情があるでしょう。

よく見る流れが、「未経験から稼ぎ方のノウハウを確立」→「月収○○万達成」→「私のノウハウを知りたい人はこの商材を買ってね」と、高収入をえさに高額な情報商材へ誘導しているケースです(しかし残念ながら、商材の内容は無料のブログ以下という話もよく聞きます)。

ただし、もちろん全員が全員怪しいライターではありません。知り合いの優秀ならライターが、プロフィール文で収入アピールをしていたこともあります。

ただ、ライターに依頼する側の編集者に「よけいな警戒心を抱かせる」可能性は高く、SNSやブログを仕事につなげていきたい場合、特別な事情がなければ収入アピールは避けるのがベターです。

2. いくらでもねつ造できる

皆さんは、SNSのプロフィール文に書かれている「収入」の裏付けになるデータを見たことがありますか? おそらく、収入アピールをしているライターの多くは、具体的な収入の証拠を公開していないでしょう。

これが何を意味するかといえば、文字だけなら「ねつ造し放題」ということです。仮に、「月収30万円達成!」と書いてあったとして、そのライターが本当に月収30万円を達成したか確かめる方法はありません。

つまり、ねつ造し放題な月収アピールは、実績としての説得力が弱くなってしまうのです。逆に、過去に執筆した記事/立ち上げたメディアなどの実績はねつ造が難しく、再現性が高いので説得力が強いです。

収入アピールをするくらいなら、過去の執筆記事のPVや反響、執筆時の苦労やエピソードなどをアピールしたほうがよっぽど編集者の目に留まりやすいでしょう。

(余談ですが、仮に月収の裏付けとして「Web通帳」や「報酬確定画面」のスクショなどが張られていたとしても、信用することは難しいです。なぜなら、画像は簡単に加工できてしまうから!)

3. 「収入」の定義次第で金額の意味が大きく変わる

「突然ですが、私の最高月収は100万円です」

……皆さんはこの一文がウソだと思いますか? それとも本当だと思いますか?

答えを言ってしまうと、これは一応本当です。ただ、裏にはカラクリがあり、「数か月かけて執筆した書籍の原稿料、コロナ関係などの補助金がたまたま同じ月にまとめて振り込まれた」というだけ。単純計算の年収1200万円には当然届きません。

このように、一言で「月収」と言っても、その収入が毎月発生しているのか月ごとの波のなかで一番高収入の月を抜き出しているのかで、実態は大きく変わります。

さらに、そもそも「収入」という言葉は定義が広く、「どの段階のお金」を指しているのかが見えづらいのも事実です。

具体的に言うと、フリーライターが「収入」と呼ぶお金には、だいたい以下の段階があります。

  1. 売上(シンプルに、報酬として振り込まれた額の総額)
  2. 所得(売上高から、各種経費を差し引いた額)
  3. 手取り(所得から、税金などを差し引いた手取りの収入)

上記の3つは、すべて「収入」の一言で説明されることが多く、「どの段階のお金の話をしているの……?」という点が見えづらいのです。

実際、たとえ月収(売上)が1000万円だとしても、各種経費で1500万円かかっていたら、所得はマイナス500万円。「月収1000万達成!」と聞くとつい憧れてしまいますが、実際は大赤字かもしれないのです。

SNSなどでは細かな収入の定義が明かされにくい以上、実績としての説得力が乏しいと判断されます。

(一般的にはあまり「収入」の定義が意識されないため、それを逆手にとって「売上」をアピールし、初心者をだまそうとするライターがいるのも事実です。毎月固定給が発生する会社員の方に、フリーランスに収入の波があることはあまり知られていない気がします)

4. 限られたプロフィール欄に書くべき情報は他にある

ここまで、収入アピールの効果の薄さは説明してきましたが、収入アピールに全く効果がないわけではありません。実際、「SNSのフォロワーを伸ばすためには、収入アピールが効果的」という声もよく聞きます。

しかし、ライターとしてSNSやブログを仕事につなげたい場合、「限られたプロフィール欄に優先して書くべきことはほかにある」というのが実情です。

具体的に言えば、以下のポイントは盛り込みたいところです。

  • 職業
  • どんな記事を書くライターか
  • よく執筆する媒体、過去に執筆した書籍など
  • ポートフォリオ、ブログなどへのリンク
  • 連絡先

これらのポイントを盛り込んでいくと、それなりの文字数になるはず。収入アピールがなくても、むしろ収入アピールを控えることで、ライターとしての魅力をアピールしやすくなるでしょう。

まとめ:収入アピールは同業者に響きにくい

ここまで、収入アピールを避けたほうがいい理由を解説してきました。

皆さんが思っている以上に、現役の編集者はライターのSNSをチェックしています。もちろん、「編集者が見ているから、編集者ウケのいいことを書きなさい」と言うつもりは一切ありません。

ただ、もし「収入アピールをすることで、編集者に自分を売り込める」と思っている方がいれば、それは逆効果になりかねないと伝えたいです。

SNSやブログで収入アピールをしている方は、この機会に「自分の目標を実現するために、本当に収入アピールは必要か」ということを、よく考えてもらえればと思います。

ABOUT US
齊藤 颯人
『Red Pencil』編集長、FP事務所『トージンFP事務所』代表。1997年東京生まれ。上智大学文学部史学科卒業。大学在学中より学生ライターとして活動し、卒業後はそのまま新卒でフリーライターに。歴史やフリーランス、旅行記事などを中心に執筆し、フリーランスメディアで編集者としても活動している。