未経験・初心者の若手ライターが、ライタースクールや講座に通うべきでないと思う6つの理由

何事も、新しいことに挑む前には「誰かに習いたい」と思うもの。社会に出る前には学校で学びますし、弁護士になりたいと思ったら法学部で学ぶでしょう。

同じ要領で、「ライター」になりたい未経験者や、駆け出しの初心者にも「ライターの先輩から知識を学びたい」と思う人は多いですし、私もかつてそう思ったことがありました。こうした需要に応えるべく、世間には数多くの「ライタースクール」「ライター講座」があります。

しかし、ライターデビューから2年ほど独学でライターの経験を積んだ結果、「初心者・未経験者の若手ライターは、ライタースクールや講座に通うべきでない」と思うようになりました。

今回の記事では、そもそもライタースクールで学べることと、私がこうした思いを持つにいたった理由を書いていきます。

1.ライタースクール/講座の概要

ライタースクールや講座は、もちろん主催者によってそれぞれが個性を持っています。しかし、おおむね似たような特徴のものが多いので、一般的な基準を示しておきましょう。

1.講座数と料金体系

まず、受講するにあたって気になるのは講座数と料金です。結論から言えば、ライタースクールの講座数に対し、料金は高額になりやすい傾向にあります。

たとえば、ライタースクールとして一番の知名度を誇る「宣伝会議」主催の「編集・ライター養成講座 総合コース」は、全40回の講座数で17万円。人によっては月収を超えかねない費用です。

宣伝会議のホームページ
▲出典:宣伝会議

ほかにもいくつかの講座を見てみましたが、講座Aは全10回/9万9800円、講座Bは全6回/16万5000円といった感じで、相場として10万円は超えてくるという印象があります。

2.教われること

高額の費用を出して何を教わるかといえば、言うまでもなく「ライター」として活躍するための知識です。たとえば、さきに触れた宣伝会議なら、

  • ライターの基礎知識
  • 企画の出し方
  • 主催のやり方
  • 文章の書き方

が学べるといった感じ。課題の提出や添削もあるほか、業界の第一線で活躍するプロの話も聞けるので、十分価値ある中身にはなっていると思います。

3.人脈が広がる

教われること自体は上記の通りですが、ライタースクールにはほかにも良さがあります。

たとえば、講師として招かれている一流どころの業界人と接点ができます。たんに講座を聞くだけではなく、講義後に質問を聞きに行けますし、場合によっては受講生たちと飲み会に行ってくれる講師もいるかもしれません。

ほかにも、周りの受講生たちはみなライターを目指す人たち。同じ土俵にいる彼らと交流を深めることもできるでしょう。

こうした「人脈」が力になるのは事実なので、これも魅力の一つですね。

2.初心者・未経験ライターにライタースクール/講座が必要ないと思う6つの理由

先に言っておくと、上でも書いた通りライタースクールで得るものは少なくありません。しかし、若手のライターがライタースクール/講座で学習するのは、ぶっちゃけコスパが悪いと思っています。

その理由は以下の通りです。

1.インターンやアルバイトでお金を稼ぎながら知識は学べる

これが最大の理由で、若手のうちはインターンやアルバイトとして出版社やWebメディアの編集部の一員になりやすく、こちらの場合はお金をもらいながらライターの知識/経験を学べるからです。

たしかに、出版社への就職が厳しくなっているのは事実なので、新卒で入社するのは難しいでしょう。しかし、学生インターンやアルバイトとして組織の中に入るのはそれほど難しくないですし、わたしも新卒1年目にWebメディアのインターン生として編集部に入りました。

また、編集プロダクションやベンチャー企業なら人手が足りていない場所も多いので、ある程度若ければ未経験からでも十分に戦力としてカウントしてくれます。

若いうちはお金もあまりないと思うので、お金を払って知識だけを得るより、編集部の一員として知識を吸収しつつ、お金を稼ぎながら実戦経験を積むのがライターへの近道です。

2.「ライター」に初期投資をあまりするべきではない

ライターは、始めてみるのに初期投資がほぼ不要なところが魅力です。それゆえに、主婦や学生でも気軽にライティングができます。

しかし、最初の頃から多額の費用をかけてライターになるのは、ライターのいいところを一つ消しているように思えてなりません。ライターは良くも悪くも特殊な仕事なので「やってみて全然合わなかった……!」という人もけっこういますし、そうなったときに多額の初期費用がかかってしまうのはもったいないです。

最初のうちはまず独学でトライし、仕事をこなしていくなかで「なにが得意で、なにが苦手か」「なにを知りたいのか」ということが分かるようになってきた頃に講座を受けたほうが、効果は期待できると思います。

3.初心者、未経験者向けの知識は、たいていネットか本で得られる

世の中には、多くの「ライターノウハウ」が出回っており、とくに初心者、未経験者向けのものは非常に数が多いです。つまり、初心者、未経験者向け情報のほとんどはネットや本で得られます(たとえばこのサイトにも、以下のような初心者向けのコンテンツはたくさんありますしね)。

それゆえに、経験が浅い状態で講座を受けるのはおすすめできません。

もちろん「いい情報とそうでない情報を見分けるのが難しいから、講座に頼る」というのも選択肢です。しかし、ライターとは情報を取捨選択し、読者に届ける仕事。それを「めんどくさい」「難しい」と思ってしまうのは、「ライターには向いていない性格なのでは……?」と思ってしまいます。そこは自分の経験や感性を信じるべきですし、自力でいい情報にたどり着いてほしいところ。

ちなみに、自分がライターとして経験を積み、ピンポイントで疑問が出てきた場合は情報が表に出ていない場合もあります。この際はお金を払って適切な人に必要な情報を聞いてもいいと考えています。

4.結局、やってみないと分からないことが多い

さきの宣伝会議の講座を受講した場合、ライターとして生きるうえで必要なことをおおむね学べると思います。しかし、身も蓋もないことを言ってしまうと、とりあえずライターをしてみないとわからないことは非常に多いです。

たとえば、さきほど「取材の方法を学べる」と書きましたよね。たしかに、知識としては得られるでしょう。ところが、取材というのは「やってみないと分からないこと」が多く、わたしも本で学習した知識が現場ではぜんぜん通用しませんでした。

それは本の情報が悪いというわけではなく、実際に現場で遭遇してみてはじめて実感できるケースが多いからです。取材目的と違う話をインタビュアーが始めてしまったときの対応を知識として学習することはできても、実行するには何度もそのシチュエーションに遭遇しなければなりません。

そう考えると、たとえ10万円以上のお金を払っても、即効性のある知識は得られないことになります。これを意外と勘違いしている人は多いので、要注意です。

5.「ライター」はあまりにも十人十色

ライターは、執筆ジャンルや執筆媒体、取材や原稿作成方法などがかなり多様です。実際、わたしも現場で活動するプロライターの一人ですが、同じ媒体で執筆するライターと記事の書き方がぜんぜん違うケースは珍しくありません。

なぜなら、ライターの働き方に「正解」はないから。しいて言うなら「記事を書きつつたのしく生活できているライター」が正解の働き方という感じなので、人によってアプローチがぜんぜん変わってしまうんです。

一方、自分の中には、なんとなく「こんなライターになりたい」という像があるはずです。たとえば、紙媒体で政治の闇を暴くジャーナリストになりたいライターが、Web媒体で求人広告をメインに活躍しているライターの話を聞いても、あまり得るものはありません。

こうした事情があるので、講座を受ける前には「自分はどんなライターになりたいか」「この講師から何を学びたいのか」を明確にする必要があります。そして、それが明確になってくれば、逆説的ですが「講座を受ける必要はないんじゃないの?」と思ってしまうわけです。その理由は次に説明します。

6.講師の先生たちとは、案外飲み屋で会えたりする

そもそも、ロールモデルとなるライターが講師業をしている確率は高くありません。しかも、輪講形式の講座は多く、あこがれの講師以外の話もお金を払って聞かなければなりません(もちろん、そこから学べることもあるでしょうが)。

講師たちはたしかに一流の業界人ですが、たとえばキムタクやイチローのような「スーパースター」ではありません。そのため、意外と新宿や浅草の飲み屋をうろついていることも多く、ライターや編集者の集まる界隈だと目撃情報はけっこうあります。

つまり、講師たちにはお金を払わなくても、飲み屋で会えてしまう可能性があるのです。

また、自分が学生や若手で、かつそのライター/編集者のことをしっかりと知っていれば、「どうしても会ってお話を聞きたい」とSNSなどで連絡することで会える可能性もあります。

彼らは多忙なので、なかなか応じてはくれないかもしれません。しかし、連絡するのはタダです。常識と誠意のある形で連絡をすれば、断られることはあっても怒らせることはあまりないと思います。気になる相手には、一度コンタクトをとってみてもいいでしょう。

まとめ:ライタースクールや講座は若手ライター向きじゃない

ライタースクールや講座は、基本的に若手ライターには向いていません。なぜなら、彼らにはお金がない一方、時間と若さがあるからです。

ライタースクールは、その性質上「お金を払うことで、情報選びや修行の手間を省く」という一面があります。本業が忙しく、高齢になってからフリーライターを目指すならスクールは真価を発揮するでしょう。

しかし、若手のうちは有り余る時間を有効に使い、ライター/編集インターンをしてみたり、あこがれの業界人に会いに行ったりしてみたほうが、キャリアの幅も広がります。

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齊藤 颯人
『Red Pencil』編集長、FP事務所『トージンFP事務所』代表。1997年東京生まれ。上智大学文学部史学科卒業。大学在学中より学生ライターとして活動し、卒業後はそのまま新卒でフリーライターに。歴史やフリーランス、旅行記事などを中心に執筆し、フリーランスメディアで編集者としても活動している。