webライターがクラウドソージングから「卒業」した話:未経験の頃から愛用していたサービスを、なぜ使わなくなったのか

2019年2月の収支を振り返ると、主たる収入源であった「クラウドワークス」と「ランサーズ」経由での稼ぎが「0円」になっていることに気づきました。

これは、文字通りクラウドソーシングサービスからの「卒業」を意味します。

クラウドソーシングで一番稼いでいたころと比べると、仕事の質も収入額も上がりつつあるからです。

ライターとして未経験の頃からクラウドソーシングに頼りきりだった私が、なぜサービスからの「卒業」を決意したのか。

実体験を振り返りつつ、解説していきます。

1.クラウドソーシング自体には、とても感謝している

まず初めに言っておくと、この記事は「クラウドソーシングをdisる」内容にはなっていません。

クラウドソーシングについてググってみると「クラウドソーシングは搾取される!」「仕事が割に合わない!」という記事も目立ちますが、それは「仕事の選び方」に問題があるだけ。

しっかり探せば良心的なクライアントに出会えますし、ある程度安定した収入を得ることもできます。

なので、個人的にはクラウドソーシングをdisるどころか、むしろ感謝してさえいます。

「ライターになろう」と思ったのもクラウドソーシング経由で手軽に始められることが大きかったですし、未経験から初めて得た仕事はクラウドワークスで見つけたもの。

その後はランサーズとクラウドワークスを使い分けつつ、多いときで月25万くらいは稼げました(毎日オニのように書き倒した結果なので、もうやりたくはありませんが…)

記事にもしっかりと記名してもらい、日銭を稼ぎつつ実績を積むこともできました。

そのため、「未経験・初心者からライターになるには、どうすればいいですか?」と聞かれたら、まずクラウドソーシングを勧めたいと思っています。

ブログから始めてもいいのですが、「報酬を貰いながらクライアントの意向に沿った記事を書く」という経験をすることはけっこう重要。

この原則に関しては、どんなメディアで書くときも同じだからです。

2.なぜ、クラウドソーシングを「卒業」しようと思ったのか

クラウドソーシングへの感謝自体は、今に至るまで揺らぐことはありませんでした。

しかし、ライターを始めて3か月もたたないうちから、私は「卒業しよう」と明確な意思をもって動き回ります。

当時執筆した記事の中身を引用すると

幸い実績もそれなりに提示できるようになってきたので、個人的にはそろそろクラウドソージングサイトからの「卒業」を視野に入れる時期に入ってきた感じがしています。

と語っていることからも、わりと早い時期から「卒業」を意識していたことが証明できるのではないかと。

ではなぜ、当時の私は「卒業」を考えるに至ったのか。要因は大きく分けて3つ挙げられます。

1.書けるメディアの大きさが限られている

クラウドソーシングで募集される案件は、ハッキリ言って小規模なメディアの仕事が大半。

ごくまれに大規模なメディア(っぽい仕事)の募集もありますが、

  • 大量募集で、単価がめちゃめちゃ安い
  • 執筆者の名前が表に出ない
  • そもそもどこのメディアなのか、ハッキリとはわからない

という例ばかりで、「将来につながる仕事をしている」感は皆無でした。

以上の経験から、私は「クラウドソーシング経由でライティングをしている限り、大きなメディアで堂々と記事を書く機会は得られない」と判断したのです。

クラウドソーシングライターさんの中には、サービス経由で大きな仕事をしている人も確かにいるでしょう。しかし、私を含めて大多数のクラウドソーシングライターはそうではないハズ。

このことに気づいたのが、ライターをはじめて3か月くらいたったころの話だったというわけです。実際、この考えについては今でも変わっていません。

分かりやすく例えるために、皆さんが日本最大級の経済ニュースサイト「東洋経済オンライン」の編集者だったと仮定しましょう。

東洋経済オンラインを運営する東洋経済新報社は、古くから力をもつ老舗の出版社。雑誌『週刊東洋経済』や書籍『四季報』などの刊行で知られており、WEBメディア・東洋経済オンラインも近年PV・UU数を急激に伸ばしていることで知られています(PV至上主義的な内容には賛否もありますが)

彼らは長年の出版経験を通じて数多くのライターを知っていますし、ライター側もこの会社を知らない人はいません。またメディアとして、質の高い記事を生産することも求められる立場にあります。この状況において、あなたはわざわざクラウドソーシングを使ってライターを募集しますか?という話。

実績や専門性に長けた知り合いのライターに記事を頼めば、クラウドソーシングを使う必要などないのです。

2.報酬に「見えざるカベ」がある

上の「大きな仕事がしにくい」という点にも関連しているのですが、クラウドソーシングの仕事には「報酬の見えざるカベがある」と思います。

もちろん、クラウドソーシング経由の報酬額に上限があるわけではありません。なので、クライアントがその気になれば「1記事10万円」みたいなことも可能です。

しかし、現実にそんな仕事はありません。

その理由は単純で、「クラウドソーシングで仕事を依頼するレベルのメディアが、1記事にそんな額を投資しては回収できない」から。最近では私もクライアント側としてクラウドソーシングサービスを使い始めましたが、どうしても報酬額は低めに設定せざるを得ません。

この事情は、私のような個人サイトだけでなく、企業産の小規模サイトでも同様。なので、必然的に「報酬の上限」というのは決まってきます。

では、大体いくらくらいまでの仕事であればクラウドソーシングで受けられるのか。

ジャンルにもよりますが、私の感覚では「文字単価にして2円未満」ではないかと思います。3000字くらいの記事が多いので、記事単価に換算すると1記事あたり6000円くらいでしょうか。それ以上になると、何かしらの専門資格や士業に従事していることが必須になってくるイメージです。

ぶっちゃけ、この報酬額は給料換算すると決して高いとはいえません。30日毎日6000円の記事を仕上げたとて、月の報酬は18万円。休みなしで働いていると考えれば、最低賃金ギリギリでしょう。

私もこのスパイラルに陥ってしまいました。月に18万あればなんとか生活はできます。しかし、休みなしでひたすら記事を書き続けての18万は、割に合っているとは言い難い。

けれども、クラウドソーシングの性質上これ以上割のいい仕事を得ることは困難である。

…という行き詰まりに直面し、「卒業」を考えるキッカケになったのです。

3.サービス利用料で報酬の2割がもっていかれる

クラウドソーシングでライティングをすると、サービスの利用手数料として報酬の2割がもっていかれます。普段買い物をするときに支払っている消費税の2倍ですから、これはけっこうなダメージです。

先ほど例えに出した「文字単価2円・3000字」の仕事であれば、受け取れる報酬が6000円なのに対し、クライアントが支払った額は7500円ということ。仮に30日同じ仕事をしたとすれば、月間で45000円も報酬が減っているのです。

もちろん、クラウドソーシング側もビジネスとして我々のマッチングを行っているのであり、そこを利用している以上はやむを得ないものです。実際、特にクライアント側にとってサービスを利用する利便性は確かなものがありますし。

言うまでもなくサービス側にとって利用料収入は生命線なので、「サービスでマッチングした両者がサービス外で仕事のやり取りをすること」業界用語でいうところの「直接契約」は、規約上でも半ば脅しに近いほど強い文章で禁じられています。

ただ、考えてみればこの利用料は

  • サービスを利用しないと仕事が得られないライター
  • サービスを利用しないとライターを集められないメディア

の「営業と保障」を肩代わりしている宣伝広告費とも位置づけられます。つまり、「サービスを利用しなくても仕事が得られるライター」になれれば、この出費は不要だと判断したのです。

3.クラウドソーシングに「再入学」しないよう頑張りたい

「ライターにとっての、クラウドソーシングサービスがもつ価値」を一言で表すと

ライター未経験・初心者の状態から、独り立ちするまでの「巣」のような存在である

ことではないかと思います。

もともと出版社勤務だとか、編集者の知り合いがたくさんいるとか、そういう方にとっては無用なサービス。

しかし、私のような「業界・ライティング完全未経験のライター志望者」にとって、経験を積みながら報酬・実績を得られるのはたいへん意義のあることです。そして、おそらく大多数のライター志望者は、私と似たような境遇からスタートすることになるでしょう。

幸い首尾よくクラウドソーシングを「卒業」できたので、今後は「再入学」しないようにライターとして頑張っていきたいところです。

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ABOUT US
齊藤 颯人
『Red Pencil』編集長、FP事務所『トージンFP事務所』代表。1997年東京生まれ。上智大学文学部史学科卒業。大学在学中より学生ライターとして活動し、卒業後はそのまま新卒でフリーライターに。歴史やフリーランス、旅行記事などを中心に執筆し、フリーランスメディアで編集者としても活動している。