1円ライターを脱するには「ニッチで面白い専門性」か「鋭い問題意識」が必要?ライターのキャリアアップを考える

WEBライター経験者の皆さんは「1円ライター」という言葉をよくご存じでしょう。

念のため説明しておくと、ここでいう「1円」とは「1文字あたり」の原稿料。つまり、「1000文字書いたら1000円がもらえる」という報酬体系を意味します。

これを高いと思うか安いと思うかは人それぞれですが、私はこの金額を専業ライターにとっての最低単価だと思っています。感覚的にはアルバイトの最低賃金と同じで、「これだけ稼げるならまあ生活はできるだろう」という一種のラインなのです。

加えて、文字あたり1円の評価を得るまでにはさほど時間もかかりません。私もライターを目指して1カ月でこのラインには乗りましたし、すぐに到達するライターは多いと思います。

ただ、ある程度ライターとして経験を積んでいくと「1円ライターを卒業したい!」と思うようになるでしょう。

ところが、「完全初心者が1円ライターになる」のに比べて、「1円ライターが文字単価を上げていく」のは難易度が非常に高くなってきます。なので、これ以上のキャリアアップを諦めてしまうライターは珍しくありません。

そこで、この記事では1円ライターを脱するコツを、完全初心者ライターだった私の経験に基づいて解説していきます。

1.「文章力を上げる」のはそれほど重要でもない

単価の高いライターになる方法を考えたとき、多くの人は

「ライターというくらいだし、やっぱり上手い文章を書くのが稼ぐ近道でしょ?」と思ってしまいがちです。

もちろん最低限の文章力(てにおはや文章構成)を身につけておくことは重要ですが、残念ながらそれだけでは1円ライターを脱出することはできません。

なぜかといえば、世の中で「ライターになろう!」と考える人の大半は、自分の文章にそれなりの自信があります。少なくとも、文章を書くことが嫌いという人はまれ。

そのため、ぶっちゃけ文章力については大きな差がつきません。

加えて、基本的には個人ブログであろうが大手メディアであろうが、求められている文章力自体は「最低限」のもので十分な場合がほとんど。

言葉は悪いですが、「この人そんなに文章上手くないな」と思うライターが売れっ子としてバリバリ稼いでいる例はよく見かけます。

文章が上手いに越したことはありませんが、文章力だけで食っていけるライターは類まれなる才能の持ち主に限られていると思ってください。

2.では、どこが優れたライターは稼げるようになるのか

文章力だけでライターとして独り立ちするのは難しいですが、逆に言えば「文章力そのものは大したことがなくても、ライターとして稼ぐ方法はある」のも事実。

私の経験上、そういったライターになるためには2つの選択肢があると考えています。

1.狭く深く、できればニッチな分野の面白い専門知識がある

まず1つ目は、「ライターに狭く深い分野の専門知識がある」というパターン。

分かりやすく言ってしまえば、例えば医者や弁護士の資格・経験を持つ人がライターになれば、優れた文章力がなかったとしても稼げるようになります。

この理屈は非常に単純で、ライターの専門性や肩書きに高額の報酬を払う価値があるから、彼らは稼げるのです。

しかし、そうした明らかに高難易度かつ希少性の高い資格や経験がなければ専門性の高いライターになれないかというと、そういうわけではありません。

私たち一人一人が持っている「これだけは人に負けない!」という趣味や知識、経験も生きることがあるからです。例えば、「ゲームが好き」だったり、「アニメに詳しい」だったり、普段はなかなか評価されずお金に結びつかないものも武器になり得ます。

ところが、この「ライターとしての専門性」でよく勘違いしがちなポイントとして、自分の詳しい分野がありきたりなものだと、なかなか稼ぎに直結しないことが多いです。

分かりやすい例を挙げると「ディズニーが好きで、年パス持ってます」というライターがいたとします。我々一般人からすると、「おー、それは大したもんだ」と思いますよね。

しかし、「では、自分の周りにそうしたディズニー好きがいないか」と聞かれれば、そんなこともないというのが現状です。私の知人にも熱狂的なディズニーファンは何人かいますし、超珍しいとは思いません。

こうなってしまうと、先ほども挙げた「詳しい分野の希少性」が失われてしまうのです。「ディズニーに詳しいというだけなら、別にそんなライターはいくらでもいるでしょ」と。

実際、私も昔から映画やアニメが好きで、間違いなく一般人としては詳しいほうだと思います。が、いざ専門ライターとして仕事をしてみると、自分の専門性の無さを痛感させられました。こうした分野のライターとして働くには「作り手として作品を手掛けた」とか、「毎日寝るまも惜しんで鑑賞して、考察を重ねている」とか、そういう類の深さや専門性が欠かせないのです。

ところが、人気ジャンルの中でも別の路線から専門性を高めていく方法はあります。その答えを教えてくれるのが、「ニッチ」というキーワード。

ニッチな分野に強いライターは、それだけで大きなアドバンテージを得ることができます。

今思いついたのですが、例えば一言で「映画好き」といっても、「映画の中の『踊り』に興味があり、古今東西の映画で描かれている『踊り』について詳しい」というなら話は変わります。インド映画をはじめとして「踊る映画」は数多くありますが、「踊る映画や踊りの役割」について詳しい人はほとんどいないでしょう。少なくとも、私の周りでは見たことがありません。

このレベルでの知識があり、かつ個人ブログでの執筆経験や最低限の文章力があれば、ある程度単価の高い仕事ができると思います。なぜなら、「替えの効かないニッチな専門性」があり、かつ「記事ネタとして面白い」から。例えば、「インド映画はなぜ『踊る』のかを、社会や歴史といった視点で考える記事」は需要があるでしょう。実際、私はけっこう気になっています。

「そんなニッチなジャンルだと、仕事にならないんじゃないの?」と言われてしまいそうですが、私は「日本野球の歴史」を大学で専攻しており、それを生かしてけっこう記事を書いています。例えば以下のように。

「くらえッ、鉛玉ストレート!」明治初期の野球で使われていた、トンデモ野球道具たち

この仕事を始める前、あるいは始めて少し経った頃までは「野球の歴史に詳しいなんて、なんの役に立つんだろう…」と思っていました。しかし、今では「野球の歴史に詳しくてよかったなあ」と思うようになりました。

2.鋭い問題意識をもち、独自性のある企画が出せる

専門性のあるライターは重宝されますが、それ以上に大切なのは「企画力」があることです。しかし、「よく企画力って言葉は聞くけど、つまりそれってどういうことなの?」という方も多いかもしれません。

私なりにこの「企画力」という言葉を説明すると、「鋭い問題意識をもち、独自性のある企画が出せる力」と表現できます。

我々の生きる世界は、言うまでもなく無限の着眼点であふれています。その気になれば、自分の身の回りのありとあらゆるものが「記事ネタ」に昇華する。それがライターという職業です。

ところが、何気ない日常から「面白い記事ネタ」を引っ張り出す力には大きな個人差があります。日ごろから感性を研ぎ澄ませて鋭い問題意識をもっている人は「何気なく道を散歩しているだけ」で企画が出せるでしょうし、逆にダメダメな人はどんなに面白い経験をしてもロクなネタを引き出せません。

なので、先に挙げた専門性がなかったとしても企画力だけで戦っているライターは少なくないですし、替えの効かない力なので稼ぎも高くなる傾向にあります。

もちろん、この企画力に関しては「生まれ持ったセンス」が生きるのも事実。優れた記事を生み出して大ブレイクするライターは、企画力が抜きんでている場合が大半です。

しかし、世の中には星の数ほどライターがおり、人知れずコツコツと安定したクオリティの記事を書いているもの。超売れっ子にはなれなくとも、黒子のようにメディアを支えるライターになればいいのです。

私も企画力に関してはまだまだ未熟者ですが、「企画力がセンスに完全依存したものではない」ということは分かるようになってきました。

  • 日々の何気ないことにまで注意深く意識を向けるようにする
  • 読まれる記事のタイトルや中身を分析する
  • 読者だけでなくメディア側が求めている記事像をよく理解する
  • 他のライターや編集部と交流してフィードバックを得る

などなどの点を意識すれば、センスは凡人でも自然と需要のある企画を生み出せるようになると思います。

あとは、とにかく企画を考え続けて思いついたものをなんでもメモするようにしてみましょう。私も良くも悪くも衝撃的な経験をしたとき、友達とだべっているとき、一人でぼーっと空を見上げているとき、布団に入ったとき…

と、あらゆる場面で企画を思いつくことが珍しくないからです。

考えることすべてが面白い企画に直結するレベルに能力のあるライターでなくても、経験を積むことである程度のレベルまではもっていけると思っています。

3.自分のブログで記事を書き、クラウドソーシング以外で営業してみよう

  • ニッチな知識はあるが、それを発信する場がない
  • 企画力を鍛えたい

という場合は、ぜひ自分だけのブログを開設して思うがままに記事を書いてみてください。

WEBライターとして仕事をしていると「書いてもすぐにお金にならないブログなんてやりたくないよ」と思ってしまうかもしれませんが、「将来的な成長」を考えると好きなことを書ける場は欠かせません。

例えば、「古今東西の映画で描かれている『踊り』について記事を書いてみたい」という場合は、映画サイト以外も含めて「書かせてくれそうorテーマに合っているサイト」をリサーチし、そうしたサイトのライターになったつもりでブログに記事を書いてみましょう。

そうすれば「ニッチな分野に詳しい」、「最低限の文章力がある」ということをアピールできるので、いざそのサイトに営業をかける際に大変便利。ただ、私たちが憧れるようなメディアがクラウドソーシングで仕事を募集することはめったにないので、書きたいメディアの「お問い合わせフォーム」や「ライター募集」ページに出向いてコンタクトを取ってみましょう。

加えて、ブログははてなブログやnoteではなく、できればサーバーを契約してWordPressを用いたオリジナルのサイトを作成してみましょう。理由はたくさんありますが、

  • メディアの大半はWPを使って運用されており、入稿まで求められることもザラ
  • 運営していく中で自然とSEOライティングが身につく
  • ゴリゴリに収益化を意識しなくても、ちょっとした副収入くらいにはなる

と、ライターをやっていくうえで必要なスキルやお小遣いを得ることができます。

私のこのサイトもまさに上記の目的で運用されており、ライターとしての成長に抜群の効果があったと自負しています。

WPを用いたブログの開設や収益化方法には触れませんが、ググれば大量に記事が出てきます。専門的なことは一切分からなかった私でも問題なくできたので、難易度はかなりイージーです。

一応サーバーやドメインの契約に費用はかかるのですが、当サイトでは使用している「エックスサーバー」の開設初期費用3300円と月額使用料1100円以外の出費は今のところありません。正直に言って個人ブログ程度ならどのサーバーでも変わりはないのですが、私は

  • 契約時に無料でドメインをくれた(現在もかなりの頻度でキャンペーン実施中)
  • 超メジャーサービスなので利用者も多く、トラブル対応が簡単
  • 「とりあえずエックスサーバーなら無難」という意見が多かった

といった理由でエックスサーバーを選びました。

月額費用の1100円に関してはブログ開設4カ月目には広告収入でペイできましたし、1年以上の運用でも大きな不具合や不満を感じたことはありません。サーバーに強いこだわりがあるとか、超大規模なサイトが作りたいとか、特段の事情がなければ無難な選択肢だと思います。

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齊藤 颯人
『Red Pencil』編集長、FP事務所『トージンFP事務所』代表。1997年東京生まれ。上智大学文学部史学科卒業。大学在学中より学生ライターとして活動し、卒業後はそのまま新卒でフリーライターに。歴史やフリーランス、旅行記事などを中心に執筆し、フリーランスメディアで編集者としても活動している。