ライターやジャーナリストのほとんどが経験する「取材」。しかし、学校で取材の方法について勉強する時間はなく、いざ取材やインタビューをするとなったとき、どのように進めていいのか分からない方も多いのではないでしょうか? わたしは出版社や新聞社を経ずに独学でフリーライターになったので、取材に慣れるまでとにかく苦労しました。
取材に正解はありません。それでも、ほかのライターが実際に取材をどのように申し込み、どのように進めているかが分かれば、はじめての取材が少しは楽になるハズ。
シリーズ連載「はじめての取材」第二回では、取材やインタビューをする前に必要になる「取材先・インタビュー相手の決め方」を解説していきます。
1.「ひと、モノベース」ではなく、「コンセプトベース」がよい
取材先を決めるにあたって、まずは「誰に、何を取材するか」を考えなければなりません。その際、アプローチは大きく分けて2通りあります。
1つは、「誰を取材するか」を先に決め、そこから「何を聞くか」を考えていく“ひと、モノベース”のアプローチ。たとえば、「どうしてもイチローさんを取材したい!」という思いから企画をスタートさせ、その後「イチローさんに話を聞くならどんなことを聞きたいか」を考えるのが、こちらの手法です。
もう1つは、「何を聞くか」を先に決め、そこから「誰を取材するか」を考えていく“コンセプトベース”のアプローチ。こちらは、「たくさんヒットを打った選手の話が聞きたい」という思いからふさわしい人を探し、イチローさんにたとりつくイメージです。
どちらも似ているように思えますが、取材は基本的に後者のスタイルで進めていきましょう。前者の場合、その人の情報やインタビュー・取材を通じて対象の魅力を後付けで引き出さなければならず、難易度が上がってしまいます(一方、この場合はライター側に情熱がこもっている場合も多く、熱意が良い記事を生むこともしばしば)。
後者であれば「聞きたいこと」が明確になっており、それにふさわしい対象を探していくだけなので、人選がラクになります。また、質問事項をつくりやすく、取材もすすめやすくなるので、記事のクオリティを安定させることにもつながるでしょう。
ただし、案件によっては媒体から「この対象にインタビューして、なにか情報を引き出してください」とオーダーが入ることもあるため、前者のスキルもあるに越したことはありません。
2.取材先・インタビュー相手を決める際のポイント5選
取材対象を決める順序が整理できたところで、実際にどう取材相手を選定するべきかをポイント別に解説します。
なお、取材対象はネットの情報をたよりに探せば十分です。ただし、リアルの知人や友人の紹介を得られる相手なら、取材につながる確率がグッと上がることは覚えておいてください。
ポイント1.取材の目的に合った相手を選ぶ
当たり前ですが、取材の目的を達成できそうな相手(場所)を選んでください。たとえば、イチローさんに「サッカーが上手くなるためのトレーニング方法」を聞いても、あまり意味はないと思います(意外と面白いコメントがとれるかもしれませんが……)。
ピントがズレた相手に話を聞くと、取材の目的も達成できませんし、なによりせっかく時間を設けてくれた対象者に失礼です。「この取材をするのに、本当にこの人に話を聞くべきなのか」という問いはつねに持つようにしましょう。
ポイント2.専門的な知見や経験を持っている相手を選ぶ
インタビュー取材をする場合、なるべく取材分野に対して専門的な知見・経験を持っている人を選ぶようにしましょう。たとえば、「戦国時代の戦闘方法」を詳しく知ることを目的にした取材をするとして、そのへんの一般人を取材しても意味はありません。この場合、大学で専門に研究している学者や研究者に話を聞くべきです。
ただし、専門家が見つからない場合もあるでしょう。その際は、当該分野を専門としている団体・機関に問い合わせてみるのもオススメ。「戦国時代の戦闘方法」を知りたいのであれば、戦国史の研究学会や専門出版社に問い合わせてみると、推薦がもらえるかもしれませんよ。
ポイント3.同じような取材になりそうなら、トレンドな人やモノを選ぶ
取材目的によっては、同じような取材になりそうな相手が多いこともあるでしょう。その場合は、トレンドになっている相手を優先するべきです。
たとえば、「ライブ配信で人気の“ライバー”の実態を知りたい」と思った場合、人気ライバーは数多くいるでしょう。その中で誰に話を聞くべきかと言えば、基本は「一番人気」のライバー。視聴者数が多い、SNSのフォロワーが多い、など目に見える拡散力があれば、その人が記事をシェアした際にバズる可能性が高まります。
ポイント4.著名人や芸能人にもビビらず依頼を出してみる
ポイント3にも関連した話ですが、著名人や芸能人にもビビらず取材依頼を出してみましょう。「わたしなんかが厚かましいのでは?」「断られたらどうしよう……」と考えがちですが、断られたらその時はその時。ぶっちゃけ、取材を断られてもライターにはほとんどダメージがありません。
むしろ、たまたま相手のスケジュールに余裕があったり、取材内容に興味を示してくれたりすれば、弱小ライター/メディアの取材依頼も受けてくれるケースは少なくないのです。取材は相手にとってもセルフプロデュースのいい機会になるので、ダメ元でバンバン依頼を出すのがおすすめ(ただし、テキトーに依頼するのはNGですよ)。
ポイント5.相手が見つからなければ、他の記事を参考にする
「おもしろいネタは思いついたけど、取材先が見つからない……!」
そんなこともあるでしょう。この場合、他社が出している似たような記事を参考にすると、取材先が見つかるかもしれません。世の中には星の数ほどメディアがあり、ライターがいます。一方、読者が興味を示すネタには限りがあり、どうしても似た記事というのは生まれてしまいます。これを逆手にとり、他のメディアが似たネタでどう取材を展開しているかを見れば、かなり参考になります。
もちろん、取材の丸パクリはNGです。しかし、たとえ同じ取材先を選んだとしても、取材の根本や質問の切り口が変わるだけでまったく別の記事がつくれます。
まとめ:取材先選びは、経験を積めば慣れてくる
ここまで取材先の選び方を解説してきましたが、取材経験を積んでいくと上記のポイントを考えずとも、自然に「あ、この取材ならこの取材先に行こう」と反応できるようになります。
「取材先がうまく選べない……!」という方も、まずは自分で立てた企画を通じ、取材の数をこなしてみましょう。
【連載:はじめての取材】
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