対面取材とオンライン取材、どう使い分ける?取材方法一覧と使い分け基準【はじめての取材:Vol.4】

取材の様子

ライターやジャーナリストのほとんどが経験する「取材」。しかし、学校で取材の方法について勉強する時間はなく、いざ取材やインタビューをするとなったとき、どのように進めていいのか分からない方も多いのではないでしょうか? わたしは出版社や新聞社を経ずに独学でフリーライターになったので、取材に慣れるまでとにかく苦労しました。

取材に正解はありません。それでも、ほかのライターが実際に取材をどのように申し込み、どのように進めているかが分かれば、はじめての取材が少しは楽になるハズ。

シリーズ連載「はじめての取材」第四回では、取材方法の一覧と使い分けの基準について解説していきます。

1.取材方法一覧

皆さん、そもそも取材(インタビュー系)にはどれくらいのバリエーションがあるかをご存知ですか? 私がライターとして過去に経験し、一般的にもメジャーな取材方法は以下の5つです。

  • 対面取材
  • オンライン取材
  • 電話取材
  • メール取材
  • 街頭インタビュー

それぞれにメリットやデメリットがあるので、以下で詳しく解説していきます。

1.対面取材

いまも昔も王道の「対面取材」。インタビューやグルメ、イベントなどどんな取材でも活用でき、一番濃密なやり取りが可能な取材方法です。現地に行かないとわからないことを知りたい場合、じっくり取材をしたい場合、写真や雰囲気にこだわりたい場合にはとくに有効です。

一方、昨今はコロナ禍で対面取材が難しくなり、オンライン取材も増えてきました。このように感染症対策に左右されたり、時間や交通費がかかってしまったりするため、「ベストな取材方法だけど使いどころが難しくなってきた」ともいえます。

【対面取材のメリット】

  • 現地訪問、対面を通じての空気感を取材に活かせる
  • 取材前後の雑談などで取材先と関係性を深めやすい
  • 写真や動画などを思い通りに撮影できる

【対面取材のデメリット】

  • コロナ感染状況に左右される
  • 移動時間や交通費がかかり、コスパは悪い
  • 遠方の人、多忙な人は取材しにくい

2.オンライン取材

コロナ禍で爆発的に増加した「オンライン取材」は、感染症対策を抜きにしても優秀な取材方法です。移動時間や交通費を削減できるのでコスパは抜群ですし、遠方の人や多忙な人も取材できます。

一方、現地にいないと作れない空気感は確かにあり、取材のクオリティが落ちる可能性も。ライターと取材先双方のWi-Fi環境、オンライン会議ツールへの慣れ方などによっては取材に不具合がでるリスクも高く、写真もスクリーンショットと取材先の提供写真に依存しなければならないのは手痛いデメリット。現状ではやむを得ませんが、対面取材から完全に転換することはないと思います。

【オンライン取材のメリット】

  • コロナ禍でも複数人相手の取材がしやすい
  • 移動時間や交通費を削減でき、コスパ抜群
  • 遠方の人や多忙な人も取材できる

【オンライン取材のデメリット】

  • 現地特有の空気感はつくれない
  • Wi-Fi環境やIT理解度によって取材リスクが上がる
  • 写真のクオリティが落ちやすい

3.電話取材

あまり馴染みはないかもしれませんが、じつは「電話取材」も使い勝手のいい取材方法です。電話は確実に相手に通知がとどき、文面よりもスムーズなやり取りができるので、速報性が必要な取材では効果を発揮します。また、メールアドレスやSNSアカウントをもっていない取材先だと、電話取材以外に選択肢がない場合も。

ただし、逆に最近は個人が電話番号を公開しているケースはまれで、知り合いではない個人への取材は難しいです。深い取材にならない、写真の用意が難しいのも欠点なので「速報性」や「取材の簡単さ」をどれだけ重視するかによって使い勝手が変わります。

【電話取材のメリット】

  • 取材が簡単で高コスパ
  • すぐ相手につながる可能性が高く、速報性がある
  • 会話できるので話が早くなる

【電話取材のデメリット】

  • 長時間の取材は電話代がかさむ
  • 連絡先を知るのが難しい
  • 写真の用意がかなり難しい

4.メール取材

電話取材と特徴は似ているものの、より現代的な取材になるのが「メール取材」です。メールアドレスが分かればベストですが、昨今はSNS上でもテキストメッセージを送れるため、取材先とコンタクトを取りやすいのが強み。相手も文面で回答すればいいので、普通の取材より負担も少なくなります。

しかし、メールやSNSは見落としが発生しやすく、速報性は電話に一段劣ります。また、文面に文面で答える形のため回答を踏まえた追加質問などが難しく、取材が予定調和的になるデメリットも。

【メール取材のメリット】

  • 取材が簡単で高コスパ
  • 取材先とコンタクトを取りやすい
  • 取材先の負担が少ない

【メール取材のデメリット】

  • 会話できないので、取材を広げるのが難しい
  • 見落としが発生しやすい
  • 写真の用意が難しい

5.街頭インタビュー

ここまでの取材方法とは一線を画すのが、街中でいろいろな人に話を聞く「街頭インタビュー」不特定多数の人たちに話を聞きたい場合、特定の場所にいる人たちに話を聞きたい場合は有効な取材方法です。

しかし、コロナ禍での実施が難しいうえに、なかなか回答してくれる人が現れず取材に苦戦することも。ライターの負担も大きくなるので、最近だとメール取材の要領でWeb上でアンケート調査をする人も増えてきました。

【街頭インタビューのメリット】

  • 多くの人の意見が手に入る
  • 特定の場所にいる人、属性を持つ人に話を聞きやすい
  • 会話によって意外な知見が手に入ることも

【街頭インタビューのデメリット】

  • コロナ禍での実施が難しい
  • 長く話を聞くのが難しい
  • 回答してくれない人も多く、負担が大きい

2.【Q&A】最適な取材方法を選んでみよう!

ここまで見てきた「取材の特性」を踏まえ、実際に「こんな場面ではどの取材方法を選ぶべきか」をQ&A方式で出題してみます。

あくまで私の印象論にはなりますが、回答を通じて取材先選びの基準がつかめてくるハズです。

Q1.ニュースに専門家のコメントが一言欲しい場合

現在、あなたがニュース記事を執筆していたとします。そのニュースの概要を解説した後、記事の信頼性を上げるために専門家のコメントが一言欲しいと思いました。

この場合、どの取材方法を選ぶのがベストでしょうか?

A1.電話またはメール取材

今回の取材先選びのポイントは「ニュース」「一言」です。

ニュース記事ということは、速報性がなにより大切。専門家にアポを取って取材をセッティングしていては、ニュースの鮮度が落ちてしまいます。また、欲しいコメントは「一言」なので、あまりしっかり取材しても使えるコメントがほとんどなく、せっかく時間を割いてくれた取材先に失礼です。

電話、メールの使い分けは「どちらの連絡先を公開しているか」によって判断すればいいでしょう。どちらもある場合は、まず電話がいいですね。

Q2.遠方の観光協会に現地の魅力を聞きたい場合

現在、あなたは旅行メディアで自分の居住地から離れた場所の観光記事を書いています。記事では観光スポットを紹介した後、現地の観光協会の人にその土地の魅力や歴史を語ってもらいたいと思いました。

この場合、どの取材方法を選ぶのがベストでしょうか?

A2.行ければ現地で対面、ダメならオンライン取材

今回は「遠方」の取材なので、ここまでの記事を参考にすればオンライン取材を選びたくなるでしょう。しかし、今回は可能なら現地に訪問して対面取材したいですね。

その理由は、記事内で「現地の観光情報」を扱うから。観光の魅力を発信するためには、まずライターが現地を訪問して魅力を知ったうえでその情報を載せたいところです。また、観光協会を訪問するところもミソ。観光協会はその観光地にあるのが一般的なため、観光地の取材プランに組み込んで効率よく取材ができます。

Q3.売れっ子起業家たちに普段使うITツールを聞きたい場合

現在、あなたはIT系メディアで「売れっ子起業家たちが普段使っているITツールを聞く」という企画を立てています。話を聞きたい売れっ子起業家たちはそうそうたるメンバーで、かなり忙しそうです。

この場合、どの取材方法を選ぶのがベストでしょうか?

A3.メール取材一択

この記事は典型的なアンケート記事なので、取材方法はメール取材一択でしょう。

そもそも、起業家たちは極めて多忙な日々を過ごしているので、あまり取材は受けたがりません。そのうえ、自分一人にスポットライトが当たるわけではない取材のために、多くの時間を割いてくれる可能性は低いでしょう。そのため、「答えてくれたらラッキー」という認識で、いちばんハール度が低いメール取材を敢行してみるのが最善策です。

まとめ:方法別の性質を理解し、ベストな取材を!

ここまで、取材方法別の性質やシチュエーションを整理してきました。

取材経験を積んでいくと、直感的に「この取材ならこの方法でやろう」と分かってくるものですが、慣れるまでは使い分けの基準がよく分からないと思います。その時は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

【連載:はじめての取材】

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齊藤 颯人
『Red Pencil』編集長、FP事務所『トージンFP事務所』代表。1997年東京生まれ。上智大学文学部史学科卒業。大学在学中より学生ライターとして活動し、卒業後はそのまま新卒でフリーライターに。歴史やフリーランス、旅行記事などを中心に執筆し、フリーランスメディアで編集者としても活動している。