取材やインタビューはなぜ必要?ライターがこたつ記事だけ書いてはダメな理由【はじめての取材:Vol.1】

ライターやジャーナリストのほとんどが経験する「取材」。しかし、学校で取材の方法について勉強する時間はなく、いざ取材やインタビューをするとなったとき、どのように進めていいのか分からない方も多いのではないでしょうか? わたしは出版社や新聞社を経ずに独学でフリーライターになったので、取材に慣れるまでとにかく苦労しました。

取材に正解はありません。それでも、ほかのライターが実際に取材をどのように申し込み、どのように進めているかが分かれば、はじめての取材が少しは楽になるハズ。

シリーズ連載「はじめての取材」第一回は、すべての取材やインタビューの前提となる「取材やインタビューはなぜ必要?」という、根本的な問いに答えていきます。

1.取材は必須でないばかりか、コスパも悪い

まず、大前提として考えておきたいのは、「取材は必須ではない」ということ。取材しなくても記事を書くことはできるからです。実際、この記事も、この記事を書くための取材をして書かれたものではありませんし。

取材をしない記事の代表例としてあげられるのは、ネットの情報や脳内の知識をもとに書く「こたつ記事」です(こたつ記事については、以前に別のメディアでも書いたことがあるので、くわしくはこちらをご覧ください)。

ただし、原則としてこたつ記事は「オリジナリティを欠きやすい」という懸念があります。とくにネットの情報をまとめるタイプのこたつ記事だと、すでに世の中に出ている情報をまとめなおす形になるので、独自性がなくなりやすいのです。

それでも、個人ブロガーだけでなく、大手新聞社や出版社もこたつ記事を生み出し続けています。それはなぜか。

答えはシンプルで、取材はコスパが悪いんです。取材記事を出すのにかかる人手や手間は、こたつ記事の比になりません。一方、こたつ記事とくらべて爆発的なPV数が稼げるわけではなく、成果があがりにくい。

こうした事情から、昨今では取材を一切しない記事やメディアが増えているのです。

2.取材の必要性は「取材しないと書けない記事になるか」で判断すべき

では、取材の必要性はどう判断すべきか。メディア側の人間は「取材で得られるものと失う対価」や「人的リソースの問題」などさまざまな部分に頭を悩ませなければなりませんが、ライターとしては、最低限「取材しないと書けない記事になるか」という判断軸さえもっておけばいいと思います。

たとえば、「北海道の観光」について記事を書くとしましょう。べつに、一度も北海道に行ったことがなくても、この記事は書けます。「口コミ評価順!北海道のおすすめ観光地ベスト20」みたいな感じなら、現地にいく必要はないですよね。

しかし、一度も北海道に行ったことのない人間が書く「北海道のおすすめ観光地」って、あんまり説得力ないと思いませんか? 実際に現地へ行き、自分で体験したことをまとめたほうがいい記事になるでしょう。

残念ながら、昨今は前者のような記事のほうが多いのは事実です。それでも、後者のほうが読者のためになり、ライターとしても貴重な経験が詰めるのは確か。予算やスケジュールの関係で取材できないこともあるでしょうが、できる限り取材するに越したことはありません。

3.取材するべきシチュエーション3選

最後に、「実際に取材するべきシチュエーション」を3つほどまとめてみました。

1.世の中に出ていない情報が必要な記事

世の中に出ていない情報をあつかう際には、当然取材に行かなくてはなりません。なぜなら、いくら調べてもネットや本では情報を得られないから。

これは、「世の中に出ている情報に違う角度から焦点を当てる」という場合も同様です。たとえば、Aさんの「仕事術」に関する情報はあるが、「プライベート」に関する情報がない。でも、そのことを記事にしたいと思った場合は、話を聞きにいくべきでしょう。

2.専門性が必要な記事

世の中に出ている情報をあつかう際にも、高度な分野でなかなか素人には理解できなかったり、誤記があると人命にさしさわるような場合は専門家を取材するべきです。

たとえば、素人のライターが医療の記事を書く場合。医療に関する情報は世の中にも出回っているので、自分が医者なら既存の知識だけで記事を書けます。しかし、素人ライターが医療の記事を書く場合、ただでさえ高度な知識が求められるうえ、ミスがあれば読者の健康にかかわります。

この場合は、医者に取材して正確な情報を発信するのがマスト。わたしも、過去には医師を取材してコメントをとったことがありますが、素人の認識とはぜんぜん違いました。

3.説得力を持たせたい記事

取材を通じて専門家やプロの知見を取り入れることで、記事の内容に説得力を持たせられます。さきほど例に出した「北海道の観光地」の記事でも、北海道に一度も行ったことのない素人ライターの知識だけで記事を書くより、北海道マニアや現地の人、観光協会などに話を聞いたほうが説得力のある記事になります。

同時に、たとえ自分が素人ライターでも、有識者に話を聞くことで専門外の情報も説得力のある形で発信できるので、執筆分野を増やすことにもつながります。

まとめ:取材に行くか、行かないかの判断がキモ

なんとなく「取材したほうがいい記事になる」という意識があるかもしれませんが、意味のない取材や目的のあいまいな取材は、いい記事につながらないだけではなく取材先にも失礼です。

取材に行く際には「なぜ取材するのか」「取材を通じてどんな知見を得たいのか」を明確にし、それは書評やアンケートで代替できないかなど、「本当に取材は必要か」という問いをしっかりと立てるべきでしょう。

【連載:はじめての取材】

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齊藤 颯人
『Red Pencil』編集長、FP事務所『トージンFP事務所』代表。1997年東京生まれ。上智大学文学部史学科卒業。大学在学中より学生ライターとして活動し、卒業後はそのまま新卒でフリーライターに。歴史やフリーランス、旅行記事などを中心に執筆し、フリーランスメディアで編集者としても活動している。