取材ができるライターになると、当然のように求められるのが「写真撮影」です。本来、ライターは取材して記事を書くのが仕事で、写真撮影はカメラマンの仕事。取材の際も、カメラマンが同行して写真撮影を担当してくれるケースは確かにあります。
しかし、現実問題として毎回ライターとカメラマンをアサインするのにはお金がかかるので、「取材~写真撮影~記事執筆」を一人のライターに任せることも多いです。実際、私も取材の半分くらいは一人で撮影まで担当しています。
ですが、私は文章を書くのは得意な一方、写真撮影が昔から大の苦手。ライターになるまで、ほとんど写真を撮ったことはありません。そのため、ライターになってから写真撮影にはめちゃくちゃ苦労させられましたが、最近になってようやく“マシな写真”が撮れるようになってきました。
そこで、写真撮影が大の苦手だった私が、最低限ラインをクリアした写真を撮影するために意識している6つのポイントを解説していきます。
前提:ライターに求められる撮影技術はそこまで高くない
本論に入る前に、まず「ライターに求められる撮影技術」を共有しておきます。結論から言えば、ライターに求められる撮影技術はそこまで高くありません。
もちろん、撮影技術が優れているに越したことはないのですが、どれだけ美しい写真を撮影してもWeb記事では圧縮されてしまいますし、何より本格的な写真を撮影したい案件の場合はカメラマンをアサインするケースが多いからです。
つまり、ライターが写真撮影を求められる場面は「カメラマンを呼ぶほどでもない取材」に限定されやすく、超ハイクオリティな写真を撮れなくても問題はないのです。実際、スマホのカメラだけで撮影を済ませているライターもいます。
ですが、撮影技術よりも大切な技術に、「記事に使える写真を撮る技術」があります。これはライター特有の技術で、例えば飲食店の取材記事・インタビュー記事など、記事の目的や構成ごとに必要な写真を撮影できる力は必須です。
インタビュー内容は、聞き漏らした場合でもメールや電話で再確認できますが、写真撮影は基本的に撮り直しが効きません。一発勝負で必要な写真を揃える力が求められます。
超カメラ初心者が、“マシな写真を撮るため”に意識する6つの点
1. 記事で使われる「写真のパターン」を理解する
Web記事における写真には、実は一定の法則性があります。これを理解できるかできないかで、必要な写真を揃えられるかが大きく変わります。
例えば、インタビュー取材の場合だと、
このようなアイキャッチ用の写真に加えて、
こうしたインタビュー中の風景を数種類撮影するのが一般的です。例えば、以下の記事では私が取材をしている最中にプロのカメラマンが撮影した写真が盛り込まれていますが、おおむね似たような構造になっているはず。
つまり、記事に使われる写真には、記事の種類ごとに基本となる「パターン」があるのです。これをマスターすれば、最低限の写真が撮れるようになるでしょう。求められる写真のパターンは、記事の種類だけでなくメディアによっても異なります。あらかじめ既存記事を研究し、編集者ともコンタクトを取りながら必要な写真をまず把握しましょう。
2. 日常的に「取材」をイメージして撮影練習をする
ほとんど写真を撮影したことのない人が、いきなり取材で写真を撮影するのは無茶です。そうならないために、日常的に写真撮影をするくせをつけると、それがそのまま撮影練習になります。スマホのカメラでも角度や構図の意識はできますし、一眼レフを持ち歩けば光量やピント合わせの感覚も身につけられます。
インタビュー用の写真撮影はなかなか日常的にできないので、家族や友人に声をかけて写真撮影の機会を設けてもらうのがいいでしょう。
3. とりあえず大量に写真を撮る
先ほども言ったように、写真撮影は一発勝負です。そのため、とにかく大量に写真を撮ることを意識しましょう。
例えば、記事中に5枚写真を使うインタビュー記事なら、その20倍の100枚くらいは撮影してもいい量です。これは私が先輩編集者から教えられたことで、最初は「そんなに必要なの……?」と思っていましたが、30枚程度の撮影だと「インタビュイーの表情がヘン」「背景に余計なものが映っている」「そもそも写真がブレブレ」などで使える写真が限られてしまうことに気づきました。
私のように写真に自信がない人ほど、「保険」をかけるためにも、できる限り大量の写真を撮影することをおすすめします。
4. 基本はオート、困った時はマニュアル
「撮影の際はマニュアルモードを使え」という声もありますが、基本的にはオートモードを使っていても問題ないと思います。画像の明るさや色などについては、後からいろいろと修正できますし。夜景や高速で動く物体など特殊な状況での撮影でない限りは大丈夫です。
ちなみに、「f値とかシャッタースピードとかよく分からん!」という方でも、ざっくりと「f値を下げれば周辺がボケた写真になる(上げれば逆になる)」と覚えておくのは便利です。ボケている写真は「プロっぽさ」が出るので。
ただ、「ピントが合わない」という問題はどうにもならないので、オートで撮影してうまくピントが合わない場合は、自分でピントを合わせる必要があります。インタビューやグルメの撮影でもよく遭遇するので、詳しくはNiconが出しているこの記事を読んでピント合わせの方法を知っておきましょう。
5. 安物でもいいので一眼レフ、追加レンズも買う
撮影はスマホでもできますが、写真が下手な人ほど一眼レフを買っておくべきです。なにも考えずオート撮影をするにも一眼のほうが写真のクオリティは上がりますし、インタビューや取材の際に「先方の信頼感」が生まれます。「一眼を持っている」ということ自体に意味があるんですね。
私はめちゃくちゃ安物の一眼レフを使っていますが、なんとか仕事にはなっています。もちろん、余裕があればもっと高いものを買ったほうがいいです。
また、カメラ本体以上にレンズも大切なので、ぜひ追加のレンズも買っておきましょう。個人的におすすめなのは「f値の下限が低いレンズ(=よりボケた味のある写真が撮れる)」「望遠レンズ」の購入です。
前者は幅広い場面で、後者は望遠機能によって遠くのものを撮影したい場面で重宝します。ちなみに、私が使っている機材についてはこちらの記事で触れています。
6. Lightroom、Photoshopを導入する
写真は一発勝負ですが、Adobeが出している写真加工ソフトのLightroom・Photoshopがあれば撮影後も自然な形で大きな修正ができます。
Lightroomは、写真の色合いや明るさを調整するのに向いていて、私は基本的に撮影した写真をすべて簡単に補正してから記事に挿入しています。Photoshopでもこの作業はできるものの、やや操作が複雑なのでLightroomで済ませてしまったほうがいいです。
対して、「余計な人が映りこんでしまった」「取材対象者の肌荒れを補正したい」など、ガッツリ加工が必要な場合はPhotoshopを利用しましょう。
どちらのソフトも使いこなすのは大変ですが、Lightroomは基本的な機能を覚えればある程度使いこなせます。私はこちらのサイトを使って学習しました。Photoshopは機能も操作もめちゃくちゃ複雑なので、私は「Photoshopでやりたいこと」が出てきたら、随時ググって調べて解決しています。
まとめ:困った時は、カメラマンを頼ればいい
ここまで、写真撮影が苦手な私が、プロとして最低限の写真を撮るために意識していることをまとめてきました。なんやかんやで私もカメラ撮影ができるライターとして活動を続けていますし、最低限の写真さえ撮れれば大丈夫です。
ただし、難しいシチュエーション、絶対に失敗が許されない写真撮影もあるかもしれません。その場合は、無理せずカメラマンを頼りましょう。編集部と真剣に交渉すればカメラマンをアサインしてくれるかもしれませんし、SNSでフリーのカメラマンに声をかけるのもアリ。
「無理して撮影した結果、失敗してしまった……!」というのは最悪なので、場合によっては案件そのものを断るくらいのことまで視野に入れ、自分の技量と相談しましょう。